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メモの堆積、ゴミの堆積

伊藤潤二『伊藤潤二自選傑作集』

 読んだ。

伊藤潤二自選傑作集 (朝日コミックス)

伊藤潤二自選傑作集 (朝日コミックス)

 

 富樫義博が影響を受けたという伊藤潤二。とりあえず「自選」とのことなのでいい作品揃いなのだろうと期待して読んだ。自分の首を吊りにくる自分の大きな顔の話と、夢の体感時間がどんどん長くなっていって身体が変容しちゃう話が好き。読んでて一番きつかったのは油度がどんどん高まる焼き肉屋の話。もうあの部屋の感じとか、ニキビ多発して引きこもりになるところは精神的にとてもつらかった。

読んで思ったのは、確かにグロいし悍ましいけど、それ以上の何かが感じられなかったということだった。個人的には、後ろめたい魅惑のようなものを期待していた。見てはいけないんだけどつい見てしまうような後ろめたい魅惑。もしかしてこの印象と関連してくるのは、少なくともこの選集には性的なモチーフがほとんど皆無だということだろうか。グロいし怖いが性がない。漫画の線は太めでそれが暗く湿度の高いあの感じとともにある種の魅力を放っているが、そこがどこか物足りなさでもある。その点も含めて、彼が影響を受けているであろう江戸川乱歩の小説に近いと言えば近い。

私は、より線が細くて、後ろめたい欲望に浸らせてくれる漫画が好きなんだということに気づかせてくれた点で、読んでよかったと思った。